ETFには発行市場と流通市場がある
ETFのユニークなところは発行市場と流通市場がある点です。ここが従来の投資信託と最も違う点であり、ユニークな特徴です。
目次
ETFの設定・交換
日経平均に連動するETFを例に説明します。
まず機関投資家は、日経平均に採用されている銘柄の現物株を用意します。これを指定参加者(証券会社)に依頼して、運用会社に差し入れます。運用会社からは受益権(受益口数)が発行されます。これがETFの設定です。指定参加者から機関投資家は受益権を受け取ります。
逆に、受益権を運用会社に差し出すと、運用会社は現物株を指定参加者に渡します。これで口数が減ります。これをETFの交換といいます。
ETFの設定・交換が行われるのが発行市場です。
機関投資家が大きな額でETFを売買するときは、指定参加者に依頼して、発行市場で売買されます。
流通市場では受益権の売買が行われる
ETFは上場していますので、その受益権を市場で売却することができます。これが流通市場です。
個人投資家がETFを買う場合、あくまで流通市場で受益権を買っているのです。ですので、個人投資家がETFを買っても、受益権の口数を売買しているだけなので、ETF全体の口数は変わりません。言い換えると、ETF自体の純資産総額は増えないのです。
通常の投資信託の場合、個人投資家が買えば、直接、純資産総額は増えます。逆に売却されれば、純資産総額は減ります。資産の流出とともに、現物株の売買が発生しますので、手間や手数料がかかります。とくにインデックスファンドの場合、指数に連動しないといけないので、純資産総額の増減にあわせて、うまく連動するように現物株を売買しないといけません。
ETFの場合、発行市場で機関投資家が指定参加者を通して、現物株を運用会社に差し入れると口数が増えて、純資産総額が増えるのです。
また流通市場でETFが売買されても、運用会社は現物株の売買が必要ありません。
これはETFの信託報酬(運用手数料)が安い理由のひとつです。
ETFの2つの価格と裁定取引
ETFは市場が2つあるので、ETFの価格も2つ存在します。
基準価額は発行市場での価格で、市場価格は流通市場の価格です。
日興アセットマネジメントが発売している上場新興国債を例にとりましょう。2016年12月27日の基準価額は51,982円です。市場価格は52,100円(2016年12月27日の終値)です。市場価格は取引時間は変動します。
もしこのまま市場価格が基準価額より高いとどうなるでしょうか。
この場合、指定参加者が動きます。現物株を買い、運用会社に現物株を差し入れて、受益権を発行してもらい、それをすぐに市場で売ります。差額を儲けることになります。
逆に市場価格が基準価額より安い場合は、指定参加者は市場でETFを購入します。その受益権を運用会社に差し出し、現物株と交換してもらい、すぐに市場で売却すれば差額が儲かります。
このように一つの資産に価格が2つあることを利用して、儲けることを裁定取引と言います。複数の指定参加者が、裁定取引を繰り返すことで基準価額と市場価格の差が縮小されます。
逆にいえば、ETFは裁定取引の機会を与えることで基準価額と市場価格の差を防いでいるのです。